スニーカーの履き方”GET DIRTY”

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数年か前の話。ファッションアディクトならぬ、スニーカーアディクトの友人が、ランチの席で履いてるスニーカーを磨きだした。

聞くと、スニーカーを磨くために専用のウェットティッシュみたいな物を持ち歩いてるそう。誰かが彼のスニーカーを踏んでしまったりかすってしまったりすると、すかさずスニーカーの汚れを気にしていたのをみてきたので(おまけに几帳面な性格)、ありえないことでもなかった。ランチの席といっても大した場所ではなかったし、言ったら学生の溜まり場だったが、その行動に驚いたのを私は忘れなかった。行儀が悪いとかは思わなかったが、正直引いた。歩きにくくないのかと心底気の毒に思った。

その出来事があった前なのか、後なのか忘れたが、さかのぼること私がハタチの頃、ロサンゼルスへ1人で旅行したことがある。今となっては日本に当たり前のようにあるスニーカー専門店でナイキ エアマックス90を購入した。私の癖というか習性が、足が痛くなったらぼんやりと欲しいなあと思っていたスニーカーを買ってその場で履き替えてしまうことだった。その時も、前日にドクターマーチンの8ホールのブーツをおろしていた私の足は悲鳴をあげていた。考えれば痛くなることぐらいわかるだろうが、ドクターマーチンヴァージンだったことから起こった事件だった。

店員にサイズを伝えると君のはジュニアサイズしかないと言われたが、少し安くなるからお得!なんて思ったのだった。店員もやたらフレンドリーで、楽しく買い物ができた。閉店前で暇だったせいか、どうしてか店内の客も私の試着に付き合ってくれて、いいね!とばかりに親指を立ててるおじさんもいた。

ホテルに戻って、袋から靴を取り出すと袋の底に大きくプリントされた文字と私はドラマチックに出会った。

GET DIRTY

つまりは「よごせ!」ということかな。この旅で、これから共にしようと思ってはいたが、なんだかその言葉に使命を感じて、何気無い買い物だったが、より一層好きになった。ロサンゼルスの街に出かけては、何度もいいね!と声をかけられてテンションが上がった。マンハッタンのニューバランスの店内に入った瞬間、店員にいいね!と言われたのはさすがにびっくりしたが。

今でも、エアマックス90は私の中で名品だ。旅が終わってからも、毎日のように共にした。もちろん定期的なシューシャインはやってきたが、親指が見えるまで使い切った。靴にとっては本望だろうと勝手に思っている。

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