前回紹介した「マニアック」でW主演を演じたジョナ・ヒルとエマ・ストーンが初共演した作品「スーパーバッド/童貞ウォーズ (’07)」が私は大好きだ。出番は多くないけどエマ・ストーンのデビュー作。この映画が好きなだけに「マニアック」で痩せこけて病んでいるジョナ・ヒルを観ると心配になるけど、彼の出世作であるこの作品と比べると彼の演技の幅がわかって面白い。
アメリカで大ヒットしたが、日本では残念なことにDVDスルー(劇場公開せずにDVDでの公開のみ)だった本作「スーパーバッド 童貞ウォーズ(’07)」。最近はまだましになってきたけど、アメリカのコメディ映画が日本で受け入れられず劇場で公開されることがあまりないのが現状である。さらに悲しいことに邦題がダサくて損している映画はこの世に多いが、この作品もその一つだ。「童貞ウォーズ」なんて邦題の作品を大好きだというとなんか恥ずかしい気にもなるけど、映画史に残ると言えるほどの大作だ。当時、女子高生の私とってこの映画を借りるのは少し恥ずかしかったのを今でも覚えている。しかも、しばらく「童貞ボーイズ」だと思い込んでいたから、なかなか借りられなかった。まあ、確かに「童貞ボーイズ」の話ではあるんだけど。
卒業間近の高校生の週末はパーティばかりであるが、そんな周りとは反対に親友同士のセス(ジョナ・ヒル)とエヴァン(マイケル・セラ)は誰からも誘われず、もう一人のイケてない友達フォーゲル(クリストファー・ミンツ=プラッセ)と3人で週末を楽しんでいた。そんなイケてない彼らだが、セスが以前から気になっていた女子ジュールズ(エマ・ストーン)のパーティに誘われる。良い所を見せようとお酒の調達を買って出るが、フォーゲルが用意した不自然な偽のIDにセスとエヴァンは絶望するのだった。
劇中で警官として出演しているセス・ローゲンが、脚本家やプロデューサーとして活躍している同級生のエヴェン・ゴールドバーグと13歳の頃に書き上げたのが、この作品。セス、エヴァンと主人公たちの名前や、周りの登場人物も実名を使っていて彼らの青春そのものなのだ。この天才コンビが映画界になくてはならない存在になったきっかけの作品だから、この作品が映画史に残ることは不思議じゃない。
映画は、初っ端から「来年どのエロサイトに登録するか決めたぞ」と会話から始まる。この話をセスとエヴァンは合流する直前に携帯電話で話始め、合流してもなお携帯電話を切らずに話続ける姿は離れるのも名残惜しい恋人かのような二人が伺える。だが、卒業後進学する学校が別々になってしまう二人はそのことに関して”感傷的”に話し合ったりしない。だが常に強気なセスは、それでもどこかさみしそうだ。この物語のベースには、コメディの下ネタや下品なネタは存在するけど、ただの”脱!童貞日記”というわけではなくて、二人の友情を描いる。それが分かるシーンはたくさんあるけど、ラストシーンのセスの視線がそれを多く語りエンドロールを迎える。
物語のトラブルの発端であるフォーゲルが用意した偽のIDの名前が、マドンナ、アデルのように苗字を持たない名前のみの”マクラビン”でセス達を動揺させる。しかもなぜありそうでない“マクラビン“にしたのか、なぜハワイ出身の臓器提供者、なぜ25歳なのか、彼らはもめはじめる。このマクラビンことファーゲルはかなりウザいキャラではあるが、最終的に観た者の脳は”マクラビン”を欲することになる。「ユージュアル・サスペクツ (’95)」を観た後に”カイザーソゼ”がどうしても頭から離れなくなる現象は観た人ならわかると思うが、「スーパーバッド/童貞ウォーズ(’07)」を観れば”マクラビン”が離れなくなること間違いない。
こんな青春映画で喧嘩やトラブルは付き物で必然的な通過儀礼だけど、それがないとラストの絆は生まれない。正直いうと、女である私にはこの映画のすべてを理解できてないと思う。通過儀礼である喧嘩自体は、女子だとかなり陰険な喧嘩に見えるのは私だけだろうか。友情がテーマの映画に多いのは男子ばかりで、その度に女子の友情は脆いように不安に思う。だから、こんな映画を観る度に男子が羨ましくて仕方がない。結局、この映画は”童貞”だった人たち、また”童貞”が一番楽しめるのだろうという考えに行き着いた。どちらにせよ、どちらかに当てはまるのであれば観るべきだ。
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